🛑 第二部《だいにぶ》:【マッドな博士の閃き】まさかの「3進化1ボディ」計画
著:Ori子
1. 寝る時以外は、すべて開発の時間
「おい……あの人間、いつになったら休むんだイワお?」
俺たち——イシツブテ、ゴローン、ゴローニャの3ポケは、薄暗い研究所の片隅で、ガタガタと震えながら白衣の女を見つめていた。
あのマッドサイエンティスト、ポケモン博士の部屋に連れてこられてから、もう何十時間が経っただろう。
博士は、俺たちの前にそびえ立つパソコンの画面に向かって、鬼気迫る表情でキーボードをパパパパパン!!!と叩き続けている。
画面に映っているのは、複雑な3次元グラフィックと、おびただしい数の物理演算の数式だ。
「フハハハハ!!! 布の伸縮性がコンマ2ミリ足りん!!! これではイシツブテからゴローンへ裏返すときに、摩擦係数が限界を突破してしまうじゃろがぁぁーッ!!! 脳汁が止まらん!!! 開発じゃあッ! 徹夜でシステム構築じゃあーーーッ!!!」
博士は、寝る時以外、本当に1秒たりとも開発を止めない。
ご飯を食べるのも忘れ、珈琲を飲むのも忘れ、ただひたすらに「俺たちのぬいぐるみ化」のための神ロジックをビルドし続けている。その姿は、神がかった職人のようでもあり、ただのド変態のようでもあった。

2. もうモンスターボールにこもるイワお……
「……なあ。俺たち、とんでもない奴に目をつけられちまったイワお」
イシツブテが、短い両手で丸い頭をコダックのように抱えた。
「ああ。進化して手が4本になった俺の身体の構造を、どうやって『くるん』と内側に収納するか、さっきから定規で測られまくって毛並み……いや、岩肌がボロボロだイワお」
ゴローンも、4本の腕を力なくダランと垂らして白目を剥いている。
博士の情熱が、あまりにも凄すぎて、そして重すぎて、頑固一徹な岩石属性の俺たちの心が、完全にポキリと折れてしまった。
「……もうダメだお。世間にスルーされてグレてた方が、100億倍マシだったイワお。おい、みんな。一旦、あいつの視界から消えよう」
最終進化系のこの俺——ゴローニャが、ついに決断した。
俺たちは3ポケ並んで、床に転がっていた自分たちの部屋のスイッチをパチコーンと押し、情ない声をあげた。
「「「もう、モンスターボールにこもるイワお……」」」
カシャーーーン!!!と赤い光に包まれ、大急ぎで球体のカプセルの中へ引きこもる俺たち。
ここなら安全だ。あのはかせの狂気の測定ラインから逃げられる。もう外には出たくない。静かに引きこもりライフを満喫してやるんだ。
3. 物理的ロマンは、引きこもりを許さない
だが、マッドサイエンティストは、そんな俺たちの引きこもり(セーフティモード)を許さなかった。
「ぬハハハハ!!! ボールに隠れても無駄じゃあ!!! お前たちのデータはすでにワシの脳内Wikiに100%バインドされておるわい!!! 2変化のリバーシブルなど生ぬるい!!! ワシはイシツブテ、ゴローン、ゴローニャが1つに詰まった、3変化の物理的ロマンを追い求めるんじゃあーーーッ!!!
️
」
カシャッ、カシャッ、と、ボールの中から強制的に構造データだけをスキャンされまくる。
博士は、明け方にほんの少しだけスヤァ……と寝たかと思ったら、目が覚めた瞬間に「キタワンお!!!」と叫んで再び開発を再開した。
そしてついに——ミシ、ミシ、くるんッ!!!という、神がかった布の反転音が、静まり返った研究所に鳴り響いた。
「できた……。できたぞい!!! これぞ、ワシの脳汁の結晶、『くるんと3変化ぬいぐるみ』のプロトタイプじゃあ!!!」
博士のハサミとミシンがバチコーンと決まり、ついに世界を揺るがす「神ギミック」が産声をあげた。
しかし、そのぬいぐるみの中には、引きこもりを強制終了させられ、信じられない狭さの中にぎゅうぎゅう詰めにされた、俺たちの魂が閉じ込められていたのだった……。
(第二部・おわり。
第三部『体内満員電車で大バズりイワお』へ続く……)』
4コマ漫画



