🛑 第一部:【不遇の石ころ時代】地味で映えない、俺たちの孤独
登場ポケモン イシツブテ、ゴローン、ゴローニャ
著:Ori子
進化前だから、仕方ないイワお?
「……おい。今、俺のことを蹴っ飛ばそうとしたろ」
草むらの片隅、ただの小石に擬態していた俺——イシツブテは、通り過ぎようとした新米トレーナーの足元を睨みつけた。
もちろん、声には出さない。出したところで「地味な石っこがなんか言ってる」と思われるのがオチだからだ。
俺たちの属性は『いわ・じめん』。
世間がピカチュウの電撃に痺れ、イーブイの愛らしさに身悶え、リザードンの翼に憧れる中、俺たちはいつだってグレー一色の世界を転がっている。
「まあ、いいさ。俺はまだ進化前だしな。両手しか生えてないし、足すらない。映えないのは仕方のないことだイワお……。進化さえすれば、きっと世界は変わるんだモンお」
そう自分に言い聞かせ、泥水をすすりながら経験値を溜めたさ。
そして、ついにその時が来たんだ。

2. 進化しても、地味すぎて草
まばゆい光に包まれ、俺の身体は一回り大きくなった。
足が生えた! 手も2本増えて4本になった! 攻撃力もガツンと上がった!
「よっしゃあ! これで俺も一軍入り……!」
喜び勇んで近くの川の水面に、自分の姿を映してみた。
そこには——ただの、ちょっとゴツゴツした、やっぱりグレー一色のむさ苦しい岩の塊が、虚無の表情で佇んでいた。
「……うーん。進化しても、地味すぎて草だイワおお」
足が生えたところで、トコトコ歩く姿にラグジュアリーな気品は1ミリもない。手が増えたところで、やることは岩を拾して投げるだけ。
バトルフィールドに出しても、草タイプの技をちょっとかすめられただけで、4倍の弱点を突されて一瞬で消し炭にされる。
「いや、まだだ。まだ最終進化が残っている……! 最終進化すれば、あの圧倒的な大迫力の姿になれるはずだモンお!」
3. 強そうにはなったお!……だけどね。
血の滲むような特訓の果て、俺はついに最終形態——『ゴローニャ』へと上り詰めた。
どうだ! この丸々と太った巨大な岩石のボディ! 恐竜のような厳つい顔つき!
見た目は間違いなく、強そうにはなったお!!!
……だけどね。
いざ蓋を開けてみれば、世間の評価は冷酷そのものだった。
「ゴローニャ? うーん、攻撃力は高いけど、素早さが致命的だしなぁ」
「色も属性も地味すぎて、ぶっちゃけパーティーの使い所も、わざわざ使う理由も見つけにくいよね」
トレーナーたちのそんなヒソヒソ話が、俺の硬い耳にバチコーンと突き刺さる。
強くなっても、結局はグレーの岩石。華やかなメガシンカや、最新世代のド派手なポケモンたちの影に隠れ、ボックスの肥しにされる日々。
岩の様な硬かった心もついにヒビが
「やってられるかーーーーッ!!! 」
俺の堪忍袋の緒が、音を立てて弾け飛んだ。
「もうグレてやる! 腐ってそこらへんの道端に転がっている、ただの『邪魔な石ころ』として一生を終えてやるんだイワおお!!! 誰がバトルなんかしてやるかだモンお!!!」
ゴロゴロと自暴自棄に転がり、道端の溝にハマってふて寝を始めた俺たち。
いわタイプのプライドも、じめんタイプの誇りも、すべて泥の中に投げ捨てた。
4. マッドサイエンティスト、動く
そんな、完全に腐りきって道に転がっている俺たちの前に、突如として不気味な巨大な影が立ちはだかった。
パサリ、と白衣を翻し、メガネの奥の瞳をギラリと血走らせた男。
世界の研究者たちから「ギミックへの執念が狂気じみている」と恐れられる、あのマッドサイエンティスト——ポケモン博士だった。
博士は、溝にハマってグレている俺たちの硬いボディを、指先でねっとりと撫で回した。
「……フフフ、素晴らしい。この硬度、この球体への変形機構。世間の愚か者どもは見た目の派手さにばかり目を奪われ、お前たちの『物理的な美しさ』に気づいておらん。なんと嘆かわしいことじゃ……!」
博士は天を仰ぎ、深夜の研究所に響き渡るような、大爆笑の咆哮をあげた。
「よし、決めたぞ! ワシがこの|手で、地味で不遇な、道端の石ころ扱いされてきたお前たちに、世界が腰を抜かすほどの『最高の光』を与えてやるんじゃあーーーッ!!! 2変化リバーシブルなど生ぬるい! 3変化を1つのボディにバインディングする、前人未到の神ギミックを開発してやるイワおお!!!」
博士の狂気の歯車が、いま、凄まじい音を立てて回り始めた——。
(第一部・おわり。第二部『博士の徹夜マッド演算』へ続く……?)
4コマ漫画

【正式名】くるんと進化ぬいぐるみ CAVE DWELLER イシツブテ ゴローン ゴローニャ
【価格】11,000円 税込
(※ひっくり返すとマジで岩石3変化する神ギミックだモンお!)


